『新猿楽記』という古典

『新猿楽記』という古典を読み始めている。

著者は藤原明衡(ふじわらのあきひら)といわれている。

平安時代後期に成立したらしい。

もう十年くらい前に手に入れて、最初からゆっくり読んでいたが、

最後まで読むことができなかった。

それではなぜ、今になって読もうとしたのかといえば、

「能」について、あらためていろいろと調べ、書きまとめようとしていたからだ。

特に近頃は、ゆっくり静かな精神状態で書物に向き合えるようになって、

『新猿楽記』の内容が、驚くほど理解できようになった。

これは一体何だろう。この作品が千年以上前に書かれたものだから、

当然のごとく、あれこれ難解な語句にぶつかってはいるが、

そんなことより、内容全般の面白さが私を引き付けた。

もともと、平安時代の「猿楽」がどんなものかを探るために、

その史料として紹介されていたので、読み始めたのが、

それ以上に、登場する人物の描写が、あまりに滑稽で、リアリティがあって、

忘れられない作品になってしまったのだった。