手が冷たい・・・

 隙間だらけの古い家だから、冬の寒さは一段と厳しい。
 
 そんな中で、石油ストーブ一つと、前に娘が送ってくれた「あったか座布団」を敷いて、こうしてパソコンを打っている。
 
 両手が冷たくなる。水仕事をしたわけでもないのに冷たい。

 その手を見る。あーあ、皺だらけだ。

 当然のことだ。年に相応して、手の表情は変わるのだから。

 特に目立つのは、皮膚の皺と、爪の周りが荒れていて、ささくれ立つ一歩手前。

 でもこれは私の心の「老い」とか「荒廃」を映しているものではない。

 心は、奇妙なほどに静か。

 つい今しがたまでSNSを覗いていて、そこに、この国の絶望的な状況ばかりが見てしまっていたのに、

 怒りや悲しみというよりは、静けさに包まれている自分がいる。

 20代の頃から社会運動の片隅にいて、この国のより良い変革を信じながら生きてきたが、

 それでも確たる変化を見出すことができなかったのだ。

 何かが足りなかったのだと思う。

 決定的な何かが足りなかったとしかいいようがない。

 これから特に、その何かを探し求めたい。

 この国を、もっと多くの人が人間として扱われる国になるようにしたい。

 すべてを若者にゆだねるのではなくて、老人である私だからこそ掴むことができたものを、

 私だからこそやれる方法で、役に立たせる道を開きたいなと、静かに本気で思っている。

 私の命ということもあるし、地球とか、世界とか、この国の激変ということもあるし、

 もう、それほど時間はないかなと思いながらも、

 そうか、常日頃オウム返しのようにつぶやいていた言葉、

「生涯現役」とは、これなのかもしれない。