夜寒 夜寒・・・

 週末 古びた家は そこらじゅうが隙間だらけで

 その上 外に行った猫たちのために 窓を開けておくから

 寒いこと いや ひんやりしていること このうえない

 生き物への思い 猫語をしゃべろうが 日本語をしゃべろうが

 生き物同士の共感だから

 相手の悲しみがこちらの悲しみになったりすることばかり

 そんな状況で 家の猫たちは けっこう頻繁に

 いじめられっ子になったりする

 今夜もそんな一コマがあった

 ふたまわりも大きい猫に追いかけられて

 家の中に逃げ込んだ与作

 家の中まで追いかけてきた相手の猫は

 それはもう 堂々とした風格で 

 きっと 無敵の猫人生を歩いてきたに違いないような代物だった

 そんなのに家の中まで追いかけられたので 

 ふたたびまた 開いている戸から外へ逃げ出してしまった

 それからしばらく帰ってこないまま もう二時間くらい

 どこで 震えているのやらと思うと

 こっちが悲しくなってしまうような 秋深まる夜更け

 ところが つい今しがた帰ってきたのだ

 「与作が帰ってきたよ」と 連れ合いの声と

 彼の胸に抱かれた与作の姿だ

 それにしても 我が家の猫は 住人に似て

 いじめるのではなくて 

 いじめられることを選択してしまうのだろうか

 それが 自然なことか 

 人間も猫も 似すぎてしまうのかもしれない