ある日,教室に入ると・・・

いつもと同じ日常が始まろうとするときだった。
普段から週に10時間の授業を担う私が、その一コマを始めようとして
あるクラスの教室の扉を開けた。
その時だ。一人の男子生徒が頬を紅潮させて、別の生徒を追いかけている。
その一方で、残りのほとんどの生徒は思い思いの場所で、
一人の生徒に必死に追いつこうしている生徒を見て笑っているのだ。
私が教室に入ってくる直前に何かがあったのだろう。
その詳細は分からなかったが、怒りで真っ赤になっている一人の生徒を見て
他のほとんどの生徒がにやにやしている光景を目の前にして、
私は心の中で、何かが崩れていくような感覚を味わっていた。
始業のチャイムが鳴った。
それを聞いて、生徒たちが次々に席についていく。
つい今、怒りで真っ赤になりながら、一人の生徒を追いかけていた男子生徒が
「なんでもありませんから」と、二度もはっきりとした口調で伝えに来た。
「君がそういうならわかったから、心を静めて席につきなさい」と、
私は答えたが、それ以上は悲しみで言葉が続かなかった。
しばらくすると、生徒たちは、いつものように、
屈託なくおしゃべりをしたり、居眠りをしたりした。
そんな姿が、やりきれなかった。
人を貶める、人を辱める、それが、こだわりもなく
日常の中で繰り返されることへの悲しみ・・。
そこから浮上できないまま、今日で私は二日目になる。