故郷は遠きにありて・・・

 研究授業が終わった。

 室生犀星の「小景異情」をやった。

 1991年4月1日に、天草にやってきた私は、

 この島に暮らして26年半が過ぎた。

 私にとって「故郷」とは何だ、とそんなことを思い続けながら

 「小景異情」を、繰り返し読んでいた。

 静岡県の沼津で生まれ、8歳で東京の世田谷に転居。

 以来ずっと東京、埼玉と、都会人として生きた私が

 天草生まれの連れ合いに出会って、さらにその後も、都会で暮らし続け、

 1991年に、思い立って天草暮らしを始め、

 もうそんなに経ってしまったのか。

 しかし、いくら時間が過ぎても、

 ずっと違和感を抱えたまま暮らし続けてきたと思っている。

 犀星のように、思い続ける故郷というなら、

 私にとって、それは、やはり東京になる。