12月の25日まで仕事をした。
最終日には、一人の少年の作文を手伝った。
その子は東京へ就職する予定だ。
いや、決定はまだ来ていないが、就職できる可能性はおおいにある。
先方からの指定で、天草のことを書くように言われ、いろいろ言葉にしていく作業を一緒にやった。
通算3日かかってしまったが、こんな作業は少年にとって生まれて初めての体験のはずだ。
美しい自然の中で、いろいろなことはあったとはいえ、のびのびと生きてきた少年。
大きな目と、長いまつげと、それから笑い顔がよく似合っている。
そんな少年が、一晩を東京で過ごし、面接を終えて帰ってくると、
「東京は観光旅行で行くところですね。」といった。
東京の慌ただしさと、東京の空気の悪さと、いったいどこから出てきたのだろうというほどのたくさんの人に、
少年は、自分の生きてきた天草と、どうしてこれほど違うのだろうと思いながら、
自分の命の危機さえ、感じたのかもしれない。
しかし、すでに車は走り出していて、少年は、東京に出発することになるのだろう。
福島の原発事故の影響と、いつやってくるかもしれない大地震と、
東京の崩壊を予測させるものは、あまりに多い。
そんな場所へ、少年を就職させて、私は仕事を終えることになるのか。
この狂った権力者が居座り続ける日本という国。
その権力者にすり寄りながら、生きようとする数多くの取り巻きたち。
そして、権力者たちに好き勝手をさせたまま、やめさせることもできない力ないこの国の人々。
私も、この国の人々の中で、何一つ抗えない日々を送っている。