寒い日・・

 最初に乳癌になったのは 1991年のこと

 それから9年後の2000年に 二度目の乳癌になった

 すごい 人生には二度はできない体験をした

 今が2014年 だから私は23年間 乳癌検診をしてきたのだ

 始めは半年に一回 その後は一年に一回

 病院に通い続けてきた私

 そのたびに 検査の結果がシロと出るか クロと出るか

 その結果は 神のみぞ知るの世界だった

 それこそ単純に計算して246回以上の癌検診

 この一回一回を越えていった時の 

 自分の思いを振り返って 懐かしさをおぼえている

 なにより 家族を思った 次に 自分の人生の終焉を心に描いた

 何をしてきたのか 何一つ してこなかったじゃないか

 いや そんなことはない 

 ああ でも やはり家族だった

 残された家族の悲しみ それを越えていってくれるか

 暮らしていくには あまりに心もとない

 残された家族の姿が浮かんできた

 いろんなことがありすぎた人生だったが

 それほど珍しいものでもない

 生きていくとは こんなことだろう

 暮らしていくとは それ以外にはないと思う

 それから いつの頃だったか

 転移の兆候なしとされた時は

 神の働きだと思うようになった 

 生きていくことが大変過ぎて 

 キリストに助けを求めることができるようになってからだ 

 それから ずっと転移の兆候はなしとされて

 ああ また神は私にこの地上で働けと

 いっているのだと 理解している

 さて12月に 健診を受けたが 転移の兆候はない

 また やるべきことをやれと 神の言葉を聞く 

 それにしても 貧しい者たちが死んでいく

 体も 心も殺されていく

 その中で 貧しさにあえぎながらも

 生かされ続けてきた私

 定時制高校で お前の仕事を もう少しし続けよと

 神の言葉は 私を包んでいく

 今よりも 名実ともに もっともっと どん底の時

 やはり同じ感触を 幾度も味わってきた

 島から車を走らせて二時間の道のり

 そこに大きな病院があって 

 そこに往き そこから帰る折々のこと

 自分の命が 水面を浮いたり沈んだりするような 奇妙な感触を味わいながら

 島の暮らしを ここまでやってきたのだと

 不思議な自負がわいてきたりするのだ

 あとは 静かにこの地上を離れることができるといいな