さあ、終焉に向かって

いつも、こんな思いが心の中にありました。

それほどおかしないい方でもないように思います。

人間は生まれたその日から、死んでいくことに向かっているのだという自覚は

ないよりは、やっぱり、あった方がいいと思っているからです。

若者たちと、結構長い間、一緒に生きてきました。

定時制高校の教師を8年やって、それを最後に、学校で仕事をするのをやめる決心をしました。

それにしても、私の人生は、なかなか面白い人生だったと思います。

いろんなことを経験してきた、面白い人生だったと振り返っています。

あと二十日ほどで、66歳になろうとする今、不思議な充実感が私の心の中を満たしています。

私は、人を愛し続けてきました。

何より我が連れ合い、我が息子、我が娘に対して、

好きで、好きで、たまらないという思いで、つながっていたと思います。

しかしそれは、決して溺愛というようなものではなく、

喜びも悲しみも、共にして暮らしていく中で育まれた

究極的な「共感」と言い換えてもいいようなものです。

そうした家族との暮らしの中で、「愛する」という思いが

静かに、ゆっくりと、膨れ上がり、

さらに、日々確かなものになって、私の心の世界の基底を創っていったように思うのです。(続く)