おばちゃんが書いた日記

 今年も 許される限り生きたいと思う

 九州の西の果てで 定時制の講師として働き

 毎日 いろんな生徒たちと 懸命に生きた

 こんな時間を 与えられて幸せだと思う

 何かを教えているなんてもんじゃなく

 人間が生きていくというのは どういうことなのかを

 若者たちの姿の中に 見出しながら

 感動させられる 

 たとえば 良い子とか 悪い子とかがいたとして

 そんな言い方が まったく無意味だということが

 わかりすぎるほどわかるという意味で

 毎日が感動の連続なのだ

 「良い」と「悪い」が共存するのが人間

 そんなことは 子どもでもわかる理屈だ

 大人のいうことなんて聞かない若者が 

 恥ずかしそうに 笑っている顔など 

 多くの人は まともに見たこともないはずだ

 もっと 自分を主張していいのに

 もっと 自分を好きになったらいいのに

 決してそんなことはせず 

 慎ましく微笑んでいる横顔なんて

 何と 形容したらいいか

 ただもう 好きなんだなあ

 もう少し 一緒に生きよう 

 一緒に生きさせてほしい 

 迷惑がらないでほしい

 「おばちゃん」は すぐ後ろからついていきたい

 「おばちゃん」って呼ばれて

 その優しい響きが 近ごろ すっかり好きになってしまった