手のひらを見ると、ああ、私はもう老人だなと、しみじみそんなことを思う。
皺が寄って、手の皮も薄くなって、私の手は、私の命を刻んできた。
この手で、いろんなことをしてきたな。
我が子を抱いて、我が子を育てて、この手は、次々に働いてくれた。
これまでの仕事のほとんどは、ペンをもって、色々書いたりしてきたから、
そこでもまた、たくさんの仕事をしてくれたなと思う。
そうだ、ペンの後は、パソコンのキーボードを打つこと。
だから、左右の手の十本の指が、キーボードの上を、しゃかしゃかと動いてくれた。
それからまた、黒板にチョークで字を書くのも仕事だったから、
手の先が、チョークの粉で、白かったり、赤かったりしたこともあった。
思い出せば、まだまだあって、数えきれない。
でも何より、私の手は、連れ合いの手をしっかりと握って、
今日まで、歩いてきたように思う。
その始まりは、40年以上も昔のことになるな。
ああ、忘れてはいけない。
政治的な主張をするために、大きなデモの隊列にいたことを。
あの時も、私の手は、隣に並んだ仲間の手を、しっかりと握っていたんだ。