南の島通信 2

公立高校の入試が今日から始まり、もう一日目が終了した段階で、修了した科目の採点作業が開始される。一枚一枚、誤りがないように丁寧に採点しながら、高校入試という一つの階段を上っている子どもたちのことを、思ってみたりしていた。
人間のそれなりに永い一生の中の、一つのステップ、一つの節目を越えていこうとする子どもたちの姿を想像すると、何となく新鮮な感覚に浸ることができる。顔も知らぬ子どもたちの、その子にしかありえない未来への道が、出来ることなら健やかに、切り開かれたものであってほしいと思う。
それにしてもなんて寒い一日だっただろう。朝方には小雪がまっていたし、冷たい北風も追い打ちをかけた。寒いのは辛い。三月になって、少しずつ陽気が春めいてきていただけに、突然気温がさがって、この落差が体にこたえるのだ。
貧しいものには寒さはきつい。暖房費もかさむし、何より家の隙間風にも耐えなくてはならない。今の家は、引っ越してから一年になろうとするが、それでもこれまで住んでいた家よりずっとましで、戸がガタピシするようなことはないから助かっている。
その一方で、こうしている今も、住む家を失い、路上で身を横たえる人がいるはずだと思うと、心が重くなっていく。人々の安らかな暮らしを創り出していくことこそが、政治の役目なのだと、この国の権力が決して思わない以上、人々の不幸は終わることはない。
私も、そして家族も、家を失って行く当てのない人々と、いつ同じ状況になってもおかしくはないが、まだ、もう少しやっていける余力が残っている。腐食したこの国で、どうやって人間として生きてゆけるのか。そんな思いを共有する家族と一緒に、もう少しやっていけそうなのである。