南の島通信 1

(南の島通信)1
こんなふうに名前をつけてしまえば、毎日書かなくてはならなくなるかもしれない。いや、実は毎日書きたいのだ。
都会からこの島にやって来て、あと20日もすれば24年になる。今63歳になっているのだから、なんと人生の三分の一を、この島で暮らしたことになってしまうのだ。
「なってしまう」と書いたのは、やはり少しだけ、残念な気がしているからだ。この島にやって来て、それまで抱いていた期待のようなものが、大きく砕けてしまったということを否定するわけにはいかない。
本当に激動の24年間だった。挫けることがいっぱいあった。でも、そんな経験の中で人間の弱さと、人間の強さを、自分の中に発見しながら、私はたくましく生き抜いてきた。
思えばいつも、いつも、前へ前へと歩いていた。自分の内側で、様々な思いが駆け巡り、その途中で何度も立ち止まりながら、自分の歩く道を選びながら、生きてきたように思っている。
社会に流されたくない、時代に翻弄されたくないと、そればかりを思ってきたが、結果的には、何度も何度も押し流されて、悲しみにくれてしまったこともたくさんあった。
 そんな経験を重ねながら、今がある。今こうして、自分の姿を静かに振りかえりながら、思いつく言葉を綴っている私がいる。
 私がいて、私と共に歩いてくれた連れ合いがいて、私たちの子として、心やさしく生きてきてくれた息子がいて、さらに、遠く海の向こうの異国の地で、懸命に生き抜いている娘がいて、やはり家族とは不思議なものだと、何ともいえない感動に浸っている