ブッチ、どうしているかな。
外は雨が降っているけど、生きているかな。
ブッチが出て行ってから、もう、二か月が経ってしまった。
我が家は、山の中だから、ブッチが交通事故にあったとか、
保健所に連れていかれたとか、
そういうことは考えにくい。
去年の二月に生まれた、四匹の男の子の一匹として
我が家で暮らしていたブッチは、
一歳を過ぎたある日、何かを決意して
山の方に向かって歩いて行ったに違いない。
偶然の事だったが、その少し前の様子を、
私は家の窓から見ていたのだ。
「ここ二、三日、ブッチが帰らないよ。」と言う連れ合いの言葉を聞いて、
いったい、どこへ行ったのだろうと、
毎日、ブッチの帰りを待っていた。
山の向こうには、何があって、誰と出会ったのだろうか。
そんなことを思いながら、
ともかく、何とか生きていてほしいと願っていた。
実を言うと、今年の一月には、ホシという名の兄弟が家を出て、
さらには、ブッチの後に続くように、
五月の二十日過ぎには、ギイという名の兄弟が家を出ていった。
ところで四匹の男の子を生んだのは、一匹の三毛猫だ。
私たちは、その三毛猫にミッケという名前を付けた。
ミッケが初めて我が家に来たのが一昨年の十月。
それからほどなくして、
ミッケは、家の前の小屋で子どもを産んだ。
それが去年の二月の事だった。
すでに家には、チビスケという飼い猫がいたから、
庭で餌をやったり、寒い日には雨風が当たらないように箱を準備したり、
それからミッケに避妊手術をさせたり、
できる限りの手助けをしていたのだ。
そうしているうちに、去年の七月には、
チビスケが腎臓病で死んでしまって、
もう、猫を可愛がって、つらい思いをしたくないなと思っていたのに、
気が付いてみたら、ミッケの家族を支えている毎日が始まっていた。
今はアカという名の子どもが残っていて、
母親のミッケに甘えながら、我が家で暮らしている。
それでも、こうしているアカも、いずれは家を出て、
山の方に向かって歩いて行ってしまうのかもしれない。
私たちには、できる限りの援助しかできないから、
こうしたやり方で、半分ノラ猫の家族を支えていく。