さあ、もう寝ます・・

 今日はとっても疲れた日

 こういう日を「連鎖」の日と名付けよう

 悲しみの連鎖 怒りの連鎖 イライラの連鎖 

 でも結局 愛強いと思う心が次々に連鎖する

 もういい加減にしてくれとも思うけれど

 生きているって そういう矛盾だらけのこと

 そんなことは はじめからわかっているし

 だからなんだって それが何かってことだし

 でも なかなかそういうわけにはいかない

 悲しい思い 怒りの思いが 交錯して

 一刻も早く この島を出たいという若者の横顔には

 共感の嵐が起こる

 ずるずると引き込まれるような 共同体への

 嫌悪感に 自らぐちゃぐちゃになりながら

 青年は どうしようもない苛立ちに

 早退してしまった

 島に残るとはそういうことだ

 だから どうしても外へ出たいという

 ああ わかるよ君の思いと 心の中で呟いたけれど

 青年の心には 白々と聞こえるだろうから

 ただ黙っていたけれど

 いったい何なんだと 私の中で怒りが爆発したりもする

 これは 差別された側の純粋な怒り

 ずっと以前 ある学者の奥さんが言った言葉を思い出す

 能力のない人が 島に残っているのです・・て

 悪い人ではなかった だから 

 その心の深部を見た様で切なかった

 確かに 間違いはない 誰かが出ていくから

 誰かが 仕方なく残ってもいるのだ

 老いた父や母を 誰が見るのだ

 誰がその老人たちと 暮らしを共にするのだ

 あらゆるものが この国の中心とされるところに集中して

 そこに限られた 有能だと言われた人々が出ていって

 この国の 富や権力を独占して

 そして それから どうだというのだ

 田舎は 取り残され 中枢の権力に連なる水脈へ

 権力を維持するのに必要な「栄養分」を流し続けろと

 そういう仕組みは どれくらい前からあったというのだ

 なにかこう 言い知れぬ激しい怒りがふつふつと湧いてくる

 きれいごとではない もうきれいごとはやめよう

 授業が始まろうとする もうすっかり暗くなった校庭を横切って

 その青年は 足早に帰って行ったんだ

 そうだ わかる 君ほどには 決して苦労はしなかったが

 島に二十年余りを ぐちゃぐちゃになりながら暮らして 

 君が身を切られるような思いや 

 これでもか これでもかとやられてきた経緯は

 わが身のことのように わかるんだ

 そう ただ 私には共に生きる家族がいたよ

 でも君は違う

 君の内側に 心を寄せる家族なんていなかった

 君は 心の支えが欲しかっただけなのに

 それを どうしても手に入れられなかったことが

 君の心と体を 押しつぶしてゆく

 でもね こんなふうにいいながら気がついたんだ

 私の根っこは 島ではなかった

 私の根っこは もう住めそうにはない東京なんだよね