古典をなぜ、勉強するかって・・・?

いい質問だと思う。高校生の君が、何百年も、あるいは千年以上も昔の、日本や中国の文章を読まなくてはいけないのか。素朴に疑問を感じるのも無理はないと思う。
そこでまず伝えたいことは、君がこれからを生きてゆくために、今以上により良く生きてゆくために、古典は読まなくてはいけないし、ぜひ、読んでほしいということ。
さて、2013年の今、君はこの世に生れて17年目を迎えている。過ぎてきた17年の歳月で君の心も体もずいぶん変わってきたはずだし、今この一瞬も君は確実に変化していて、以前の自分には帰れない。
それはね、君が決して止まることはない時間の流れの中に生きているからだ。もちろんこれは君だけのことじゃなく、生き物のすべてはこの運命から逃げることはできない。そして最後にやってくるのは「死」だ。
すべての人間は限られた時間の中で生きている。だから、人生の中身を充実したものにしていくことが必要なんだ。そういう工夫は、おそらく一生続いてゆくものだけれど、人生を豊かなものにするためには、いろんなことを知り、それについていろんなことを考えていかなくてはならない。
勉強はそのためにする。そして、その一つに古典がある。古典は時代を遠く隔てた古い作品だから、昔の人のことがいろいろわかって、今の自分と比べながら、今の自分の生き方を改めて考えさせてくれる。
自分の生き方ばかりではない。今の社会や今の政治などについても、昔を知ることで、何が変わって、何が変わっていないのかもわかる。そうやって、いろいろ深く考えることが、今以上に自分の生き方を良くしてゆくことに必ずつながっていくと思う。
だから、古典を勉強しなくてはいけない。ぜひ、古典を勉強してほしいと思っている。
でも、何よりも重要なことは、まず、君自身が生きている自分を深く見つめることだと思う。生きるってなんだろうって考え、人間ってなんだろうって思い、そういう、形のないような物事について、考えて見ようとすることから始めてほしいと思う。
いってみれば古典は、死んでいった人達が書き残したものだ。私も君もいずれ死んでゆく。その時、自分の後を歩いてくる人達に向かって、伝えておきたいことを書くことができるだろうか。古典は、そういう本だと思っていいと思う。