曇り空

朝から君は 息をつめて
文字を書いていた
ダム建設反対の集会があるから
その準備
だから 私も息をつめて
傍らで そっとトーストを食べていた
そうやって君の仕事が終われば 
君の心はまた 少しずつ伸びをして
深く深呼吸するだろうって思いながら

空は 曇り
昼ごはんは 冷たいうどん
何ということもない休日の朝
でもいずれ 巨大なダムができあがり
それで今も ジワリジワリと死んでいく
小さな生き物たちの声が
君と 私と 息子が暮らすこの家には
聞こえてくるみたい

そのかすかな悲鳴が
最初に聞こえていたのは君で
それから 私や息子や
遠くにいる娘の心にも響いていくはず
これが 伝えてゆくってことだね