朝起きたら、テーブルの上に、小さなセミがひっくり返っていました。
ああ、昨夜の台風で、隙間だらけの我が家に、
どっからか飛び込んできてしまったのかしら。
そんなことを思いながら、連れ合いと二人、
セミが横たわっているテーブルで、
そのまま、朝食をとっていました。
いずれにしても、秋は、一歩一歩近づいていて、季節は廻っているのです。
そんな思いで迎えた、朝のひと時・・・。
突然ですが、「つくつく法師」、「アブラゼミ」、「クマゼミ」、「ニーニーゼミ」。
この四つのセミの名前は、季節をさかのぼって、各々登場するセミの名前です。
朝、私は、連れ合いから、セミについて、色々教えてもらったのです。
まず、朝方、テーブルの上にひっくり返っていたセミは、
「つくつく法師」だということ。
サイズは小さく、羽は、透明なのです。
そういう話を聞いていて、いつも感心するのは、
連れ合いは、実によく自然のことを知っています。
「どうして、そんなに詳しく知っているの?」と、私が言うと、
「そんなこと、田舎では、誰だって知ってるよ」という、答えが返ってきました。
そうかなと思いながらも、とりあえずは、朝食が終わって、
椅子から立ち上がろうとすると、ひっくり返っていたセミが、
足をバタバタさせているのに気が付きました。
すぐに、近づいて、セミの体を起こしてやろうとしたところ、
なんと、セミの羽が、べたべたなのです。
あ、そうか、天井につるした蠅取紙にぶつかって、そこを脱出しようとバタバタして、
テーブルの上に落っこちてしまったのです。
そこで、もう、助けるすべもないけれど、庭の、どんな葉っぱでもいいから、
その上に、そっと置いてやろうと、やってみたのです。
すると、べたべたの羽のせいで、セミはバランスを保つことができずに、
すぐに、ひっくり返ってしまったのですが、
しばらくすると、自分で、体を元通りにして、
一枚の葉の上に静かに座ってくれました。
さて、その後のことは分かりません。
台風の行った後の、そこいらじゅうに、木々や、葉っぱが散乱している庭。
そんな景色の中で、小さな「つくつく法師」は、
短い命を終わらせたに違いありません。