T青年の コンビニ体験記2

夜の10時半になって、私は車を走らせた。
行く先はローソンS店。青年が勤めているお店だ。
しかし、その時間帯に青年は店にはいない。それを承知で出かけて行った。
目的はあった。
同じ日の午前中、帰ろうとする青年に暴言を吐いたM店長の顔を見ておきたいと思ったからだ。
過疎化に歯止めがかからない島に暮らして二十年余りが経つ。
熊本からなお二時間余り車で走ってやっとたどり着く天草市
その天草市の中心といわれているのが本渡地域、そこには38000人程の人が暮らしている。
いつの頃からか、そんな町にコンビニが目立つようになっていった。
セブンイレブン、ローソン、デイリーヤマザキなど、次々と店舗が増えて、そのどれもが、24時間営業の店ばかりで、海と山ばかりの島の夜に、コンビニの看板の灯りは消えないのである。
その数は、どれ程だろうか。
わずか3800人の人々が暮らす街に14,5件のコンビニが立ち並んでいるという。さらにそこに働く労働者の数は、もちろん、そのほとんどは非正規雇用のパート労働者である。
熊本県最低賃金は時間給652円。
それすれすれか、10数円高いか、コンビニで働く労働者の賃金は、どこもそれほど変わりはないはずである。
彼らこそ、最下層を自認して間違いはない。
仮に深夜勤務がその2割5分増しとなってはいても、夜の夜中にコンビニで身をすり減らして働き、どれほどの金がもらえるというのだろうか。
それにしても、使い捨て自由の消費財のように働かされる労働者について、身近な現実としてとらえるようになったのは、青年のコンビニ勤めが始まってからのことだった。