私が歩いてきた道 1

東京育ちの私が、九州天草に転居したのが1991年4月1日。
あの日から、もうじき27年が経つ。
永い年月だったともいえるし、あっという間だったともいえる。
転居当時、私は39歳と4カ月余り、12歳の娘と7歳の息子を連れて、
夫の郷里の天草にやってきたのだった。
それから一カ月もしない5月初め、私は左乳房に癌が見つかって切除手術を受けた。
まだ幼い子どもを抱えて、右も左もわからぬ異郷の地で、とにもかくにも私の暮らしは始まったのだ。
実は私は、転居後の仕事を決めて、天草にやってきている。
夫の卒業した高等学校に、非常勤講師の口を見つけ、
転居後すぐに働けるように手はずを整えていたのである。
夫が卒業した高等学校を、就職先に選んだのは、
それ以前に夫から聞いていた、その高等学校の在り様に
私は深く共感し、その高校への深い思い入れがあったからだ。
しかし、乳がん患者になった私は、勤めて間もなく5月に入ってすぐに、その職場を辞めている。
さて、当分の間は夫が得てくる収入だけに頼ることになるが
いったいどうやって暮らして生きていくことができるだろうか。
私の生活への不安は、これを契機として、その後もずっと続くことになる。