言葉の力

私の目の前には講談社文庫『定本 パンセ(上)』がある。
この本は、ずっと前から本棚にあって、折にふれては開いていたものだ。
その中のあまりに有名な断章は以下の通り。
「人間は自然のうちで最も弱いひとくきの葦にすぎない。しかしそれは考える葦である。
これをおしつぶすのに、宇宙全体は何も武装する必要はない。
風のひと吹き、水のひとしずくも、これを殺すに十分である。
しかし、宇宙がこれをおしつぶすときにも、人間は、人間を殺すものよりもいっそう高貴であるであろう。
なぜなら、人間は、自分が死ぬことを知っており、宇宙が人間の上に優越することを知っているからである。
宇宙はそれについては何も知らない。それゆえ、われわれのあらゆる尊厳は思考のうちに存する。
我々が立ち上がらなければならないのはそこからであって、
我々の満たすことのできない空間や時間からではない。
それゆえ、われわれはよく考えるように努めよう。そこに道徳の根源がある。」

 人間は自然のうちで最も弱いひと茎の葦。しかし天変地異が起った時、人間は自分が死ぬこと、
さらに宇宙が自分よりも優越した力を持っていることを理解し認識できる高貴な存在である。
高貴の源は、人間の考える力、思考そのものである。
時々、この断章が無性に読みたくなる。「箴言」の持つ力に助けられながら生きている今日この頃だ。