人間の尊厳

「尊厳」という言葉を、広辞苑では「尊く厳かで、おかしがたいこと。」と説明している。他の国語辞典を引いてみると、「侵すべからざる権威と、他の何ものをもっても代えることのできない存在理由」という説明である。

 

 要するに「尊厳」とは「尊く」、「厳か」で、決して「侵し」てはならないものだということになる。ところで「厳か」とは、わかりやすく言えばどういう意味なのか。

 同じ広辞苑には「威儀正しく、近寄りにくいさま。いかめしいさま。」とあるが、またまた「威儀」を調べると、「重々しくいかめしい挙動。また作法にかなった立ち居振る舞い。」とあって、結局「尊厳」の語意は何かということが、だんだんわからなくなりそうなので、このあたりでまとめてみよう。

 「尊厳」とは「尊い」もの。「近寄りがたいもの」で、絶対に「侵し」てはならないものなのだ。さらにこの言葉は、通常、「尊厳」を持つ主体を併せて表記して、「~の尊厳」という使い方をする。

 それならば、「人間の尊厳」とは、人間が持っている「尊く、決して侵すことができない、近寄りがたいもの」ということになる。こんなふうに、自分がよく使う言葉の意味を、改めて探り、突き詰めてみることは、やはり重要なことだと思う。

 私にとって、「人間の尊厳」という言葉は、常にキーワードになる言葉である。「人間の尊厳」が損なわれることを、これからも、決して赦してはいけないと思うのなら、それがいったい何ものなのかを、言葉にしなくてはならない。