非常勤講師顛末記 その2

 地元の工業高校へ非常勤講師として働き始めて一か月余り。

 つい最近の出来事から書いてみたい。

 非常勤講師は、昔、私もやった仕事。

 その頃は、授業時間だけが報酬の対象だったと記憶している。

 それが、今年4月働き始めてわかったことは、

 試験の作成や採点、その他の打ち合わせなどにも

 報酬が支払われるというのだ。

 そんな大事なことを、細々と情報網をたどって

 初めて分かるという頼りなさだが、

 こちらは生活をかけているのだから、

 甘い顔を見せるわけにはいかない。

 ちなみに、私は「教育ネットワークユニオン」という組合員の一人。

 この一か月、次々のいい加減な対応をされてきたが、

 既に、何事も黙ってはいないで、質問、反論、確認などを

 躊躇いなくしようと、行動している。

 さて、ことは5月の始めに起こった。

 教頭が私に、テストの問題作りと採点の時間は、

 各一時間でいいですねと、突然の質問をしてきた。

 実はその時点まで、私は、どこまで報酬が支払われるのかを

 正確に知らされていなかったのだった。

 そこで、つい曖昧に「いいですよ。」などと答えてしまっていた。

 これはもう、弁解はできない。偉そうなことをいいながら、

 私の心の中にも「事なかれ」の精神が巣食っていたのだ。

 その一件の後、またまたいい加減な対応にぶつかったのだが、
 
 それはまた書くことにして、それから一週間程して

 教頭に向かって私はいった。

 「先生の質問に了解をしてしまったのですが、あれは撤回します。

 私が担当している生徒は約120名。作問についてもそうですが、

 採点だけを考えてみても、1時間だけ報酬をもらえるというのでは

 1人1分もかけられない。単純計算しても、それは不可能です。

 とりあえず、あの私のあの時の答えは撤回します。」

 目の前の教頭は、驚いた様子で目を丸くしていたが、すぐに

 「先生のお話は分かります。でも、ここで先生のお話を

 私一人で了解するわけにはいかないので、校長に話をします。」

 と答えたのである。

 ああ、こんな具合で、ストレスがたまっていく日々だが、

 一日一日、越えていくしかない。

 暗愚な首相の国で生きている自覚があればあるほど、

 黙っていることはできないのだと、小さな抵抗をし続けている。