残日(ざんじつ)録


昨夜観たテレビドラマは息子が連れ合い向けに借りてきたDVDである。

主演は北大路欣也

気楽に見始めたが、不思議な見ごたえを感じた作品だった。

ある藩の用人を長く勤めて、今は隠居した主人公がおりなす日々。

だが、その日常は、決して、ただ安穏としたものではなかった。

現役を離れて所在ない一日を、どう過ごしていこうかと戸惑う主人公。

しかし、かつて要職にあった関わりから、時として

面倒な藩政の闇の部分に巻き込まれて、危険な目にあったりもする。

主人公は、そんな状況に向かい合うときも、

「隠居」としての自分の立場を見失わず、表立つことのないように、

賢く、適切に処理することを忘れない。

まさしく、欲望渦巻く現実の政治と社会の中で

老いてゆく人間が、どう生きていけるのか。

積み重ねた年月、学び得た多くのものを具現化して

生涯を終えることができるだろうか。

もうずっと昔、仲代達也主演で観たテレビドラマだったが、

時が経っていま、年老いてゆく自分と重なるいくつもの課題を

ドラマを観ながら、考えていた。