こんなセリフで始まる独り芝居は・・

どんなにこの世の中に 
悪が満ち満ちていたとしても
私は 今日の暮らしのために
今日の子育てのために
実際 これまでだって
そんな悪の傍らを 
何度も通り過ぎながら
妥協して暮らしてもきたの
そうやって永らえてきた命を
賤しいなんて思ってはいない
でも 妥協したなって思った最初の頃は
そんな自分を嫌悪して
落ち込むばっかりだったけれど
妥協しなくては生きられないから
次々に妥協を重ねていくと
生きることの悲しみが深くなるばかりじゃなくて
その一方で 妥協しなくては生きられない
数えきれない人達の姿が浮かんできて
その人たちの悲しみが自分の事のように感じられてしまったの
そうするとね 心の中に怒りのようなものが
静かに あくまでも静かに立ち上がってきて
こんなに弱い私が この世の満ち満ちた悪を
真正面から 見据えてしまえるようになったの
不思議なものね 悪に打ち負かされて
その日が永遠に続いていきそうなのに
妥協を重ねて いつだって逃げ帰ってしまう自分なのに
それはそれとして見詰めていながら
いってみれば自分の闘い方みたいなものが
わかってきたのかもしれない
弱いものを なめちゃだめよ
弱い者ほど 捨てるものがないってことを
忘れちゃだめ
だから 私は満ち満ちた悪の傍らで
何食わぬ顔で
相変わらず今日を生きてゆくけど
そういうわけだから
油断しないでね・・・
何よりも この社会に満ち満ちた悪を
悪と思わなくなることだけは
決してあり得ないってことを
覚えておいてほしいの