「伊勢物語」にこだわる.

一週間くらい前から、授業の道筋を追って、「伊勢物語」の「井筒」の研究授業に向けて、考えをまとめようとしている。
伊勢物語」が「歌物語」だといわれる理由を、あちこちの参考書を調べながら、いくつもの記述を探してみた。その中に、次のようなものがある。
「歌物語というのは、歌を中心にした物語」(日本古典文学大系伊勢物語 四 文学史的位置および意義 P90)、「歌を中心とした短い物語、それらを集めて一つの物語にしたもの」(広辞苑
なんとも、簡単な記述なので、そのおおもとを探ろうとすると、次のような記述に出合った。「日本の文学は古くから歌謡・民謡とそれにまつわる伝説、説話との結合の形をとってきた。それが止揚されて、一段と純粋文芸的価値を樹立したのが『伊勢物語』であった。」
もちろん『伊勢物語』は「歌物語」の最初だから、「歌物語」の説明として、前述の記述は、なるほど納得ができる。
それならば、こうした日本文学の古くからの形態を踏まえて、「和歌」と、それにまつわる「物語」が巧みに結合して短い物語の一篇が生まれ、さらに、いくつもの短い物語をつなぎ合わせて、一つの物語が成立し、『伊勢物語』が誕生したということになろう。
それにしても、以上のような経緯によって、「歌物語」の最初である『伊勢物語』が成立したというならば、原初の古典文学と云うことになる。そこを出発点に、古典文学を学んでいけるというのは、文学の源流を実感できる好機かもしれない。