男達は みんな帰ってくる
老いた父を気遣って
病床にいる父を想って



死んだ父の弔いのために
男立ちは 帰ってくる
汽車に乗り 船に乗って



昔 男達は 
田舎で一生を過ごせるとは とうてい思えず
旅立つことが人生だと信じたまま



父と母のもとからでてゆき
都会へ都会へと歩いて行ったのは若者の頃のこと
それなのに またふたたび



故郷に舞い戻ってゆく
年とった父と 年とった母のために
ともかくも 海と山に囲まれて 暮らすのだ



そのあふれる自然の中で 暮らすのだ
でも 生きてゆく術がない
無いときづいても 無いとつぶやかないのだ



男達は 帰ってきてしまった
そこで根を下ろそうと決め
その地を愛そうとした



でも やっぱり 生きてゆく術がない
年老いた父と母の元は
男達を無力にするか 異邦人にするか



悲しい運命が待ち受けていた
それでも男達は 父を想い 母を想い
生きてゆけない土地へと帰り続ける



こうして田舎は 次々に荒れ果ててゆき
それに追いつかなくてはと
男達は 歩みを早めながら



田舎へ 田舎へと
父のもとへ 母のもとへと
帰り続ける



でも田舎は やがて だあれもいない土地になる
その傍らで 海も山も
何も知らずに 美しい ただ 美しい