起床は9時でした
すっかり秋らしくなって 風は冷たくなりました
K君がいつものように庭の小さな椅子に
一人座っていました
まわりにはゆで卵の殻が落ちていて
ゆで卵を作って
それを食べて それから血液をサラサラにする薬と
血圧を下げる薬とを飲んで
そうして座っているのだと
すぐわかりました
暑い夏が終わろうとしています
その夏の暑さがK君にはこたえています
去年の夏もそうでした
その前の夏もそうだったと思います
ぎらぎらしたこの土地の夏が
この土地で生まれ育ったK君を
痛めつけるっていうのも悲しい気がしています
K君はもともと特に虚弱ではありませんが
永年の喫煙を放置したままで
昨年の夏の終わりに軽い脳梗塞をおこし
その後は少し 酒もたばこも控えようとしてはいましたが
しばらくしてみると
また元に戻り ふた月に一度くらい病院に行きながら
いつものような自分のペースで暮らし続けている感じです
いろんなことがK君を苦しめます
いろんなことがK君を悲しみにつき落として
それですっかり元気のない
老人のような風貌になってしまいました
目は充血してどんよりとしています
顔は真っ赤で しゃべり方ははっきりしなくなりました
歩く時は 右に左にゆれています
今朝のK君もそういう感じだったと思います。
ここしばらくまた 寝たり起きたりしています
「眠ろうとしてね」と小さい声で言いながら
数時間前に酒を飲んだことを伝えてくれます
いろんなことを考え、いろんなことをやってきました
K君が元気でいてくれるように
K君が悲しくならないように
K君が自分らしく生きられるように
そして時々 そばにいる私は
暮らしの重荷で押しつぶされています
生きていることの大変さを
麻痺させるために むかしK君は
よくコーヒーを飲みました
それが いつの頃から酒に変わりました
麻痺させなくては生きられなかった
K君の歴史と一緒に歩いてきた私です
酒がないと生きられない人の悲しみ
酒がないと生きられない人のそばに生きる人の悲しみ
世の中には どうにもならないことが多すぎますが
無力な私を 今日もかみしめています
生きて暮らしてゆくエネルギーのようなものが
もしあるとすれば
それをK君に いますぐふりそそいでください
これはもう 神様の力でしょうか