9時間半もの永い時間をかけて、
理解し合えるような人間関係など、
これっぽっちもない老齢の男の命を助けようと
奮闘してくれた一人の外科医との対面。
大腸の一部を切り取って、その端と端をつなぐ手術。
その手術も、「腹腔鏡手術」と名付けられた高度な技術を必要とするもの。
目の前の外科医は、一体いく人の体を切り開き、
取り除くべきものを取り除いて延命させたのだろうと、ふと、思った。
「合併症が起こりえます。まずは腸がまっすぐにつながってくれるといいのですが。」
そう静かにつぶやいた彼の声が、私の耳元から離れない。