そんなふうにたいそうに言えるようなものもないけれど、
いなくなる時には、すっといなくなりたい。
誰からも、不思議がられず、誰からも、気づかれず、
そいうふうにして、ふっと、木々の間に、
空のかなたに、消えていきたい。
生きるというのは、本当に悲しい。
それでも、生きているけれど、やっぱり悲しい。
ストーブが一台、その上のやかんのお湯が、湯気を立てている。
66年も使った私の体は、寒さに震えながら
なんとか、私を支えているんだな。
人は生きて、その後ろを歩く人も生きて歩いて、
気づいてみたら、前にいた人は、いなくなっているけれど、
そんな光景が、自然に流れるようにあってくれれば それでいい。
寒の中で、静かに考えていることだ。
愛する人の死も、私の死も、いつか、そっとやってくるな。