これ 息峠焼の茶碗
自然の中で暮らし 自然の中で器を焼く人
毎年 春と秋に この人の器を必ず買う
上薬が いい なんともいえない色合い
おれが死んだらもったいないから
生きてるうちに 使わなくちゃと
多種類の 上薬の原料を 黒いビニール袋にまとめてみたら
85袋になっちゃったと驚いていた人
それから せっせとそれを使って 器を焼く人
息峠焼の茶碗の安堵感は
安心して いつの日か 土に帰れるなあ という安堵感
薪で焼く茶碗は さわっていてもあったかい
自然の中に どっぷりとつかって
陶芸家は たった一人で 器を焼く
窯に火がはいった晩は
生きものたちも この世にない者たちだって
その火の周りに集まって
あったまったり 炎の美しさに見惚れたり
焼物の仕上がりを 待ち遠しそうに
見えない者たちが いる いる いる