もうこんな時間になって寝ないのは・・・

4月の24日から勤め始めて21日間、Tは休みなしだった。
24日から5月の1日までは9時から5時くらいまでの勤務。
5月2日は開店初日で、朝の4時から昼の12時近くまで、
コンビニエンスストアーの厨房で働いていた。
それからはほぼ1人で朝の3時から昼の12時過ぎまで働き続け、
今日5月15日の今日まで、休みも取れないままに働いている。
そして昨日、Tと同じく開店以来、休めないままの
疲れ切っていた店長の理不尽な言葉に、すっかり折れてしまって
心身ともに限界に近くなっている。
いく人かの一緒に雇われた人達の中で
気が効く、仕事ができる人として信頼されたばかりに
無理に無理を強いられてきた。
会社にとって利益を生み出せる人間は
使えるだけ使っていくという方針だったんだと、Tは述懐している。
アルバイトから正社員にならないかと  
仕事をしてまもなく店長から声を掛けられて嬉しそうだったが、
日が経つにつれて、仕事は好きだけど、
やっぱりあの会社で社員として働いている自分が
想像できないなとつぶやくようになっていた。
9月には 通信制大学へ行こうとしているTだ。
暮らしを立てながら、家族を想いながら、自分のこれまでをふり返り
何とか 歩いていく道を探ろうとしているT。
そのTの前に、また壁が立ちふさがっている。
Tは高い能力を持っている青年だ。
その能力は、理解力と認識力において、特に勝っているといえる。
状況認識、構造認識、眼前の状況を分析して把握していく力を持っていると
近ごろ特に再確認している所だ。
これはもともとTにあった力だったが、その後の躓きや紆余曲折したTの人生が
それらを より一層確かなものとして育んだのだと思っている。
そのTが、後一時間ほどで出勤する。
今夜はその手助けしようと起きているのだ。
二階で寝ているはずのTを起してやろうと思う。
仮に このまま仕事を辞めることになったとしても
Tよ 今夜は君を起してから私は眠るつもりだ。
定時制高校勤めの私は、昼からの出勤だから、
君がまだ仕事をしている頃 明日は遅くまで眠ろうと思う。
一日、一日、生きていこう。
私も、60を過ぎて、定時制高校の教師として
一日、一日、やっていくから・・・。
まだ、もう少しは君を支えていけるからね。
君の父も、もちろん同じ思いで君を愛しているんだからね。
それにしても こんなふうにして若者が
日本のあちらこちらで ボロぞうきんのように
使い古される・・。
利益を出すためなら何でもやれる国に
時々刻々なっているのだと
いまやそれが加速する国になっているのだという実感が
身近に 実に身近に起っている最中なのだから・・・