失ってきた…たくさんのものを

 無くしてきたよね 

 たくさん たくさん

 字を忘れ始めた時 

 手書きでやるのをやめちゃったことを

 思い出したんだ

 早く書きたいからって

 時間がもったいないからって

 ワープロで カタカタカタ

 今度はパソコンで カシャ カシャ カシャ

 勝手に言葉を打ち込むと

 機械が 勝手に 漢字に直して

 そのどれにするのかを選ぶだけが

 人間の仕事になった

 人間の記憶の回路が おかしくなって当り前

 他にもね まだある まだある

 どんどん進んで どんどん退化していったもの

 人間が 生き物だってことを

 人間が 地球のメンバーの一人にすぎないってことを

 その人間が 今日一日を やっと生かされているってことを

 すべてを忘れて どういう国になり

 どういう世界が 生まれたんだろう

 持っていたはずの いくつもの荷物を

 歩くたびに ボロボロと落としていった人間

 ずっと前から 今も そしてこれからだって

 落し物ばかりの 人間の歴史なのかなあ

 でも こんな人間界への償いを

 私もしなくちゃならないから

 次の時代を生きる人のために

 希望と絶望の繰り返しの人生について

 正直に語っていこうと思っている

 神様が赦してくれる時間の時間の限りはね