一人の定時制の教師として、これまで生徒たちに何を伝えようとしてきたのかと思い返しています。
どうやって生きていってほしいのか、何を生きる核として歩んでほしいのか、
そうしたことを、どれほど具体的に語ることができたのかを反省しているのです。
実はもう2ヶ月余り「中世ルネサンス文学」についてを学びながら、
当時の知識人たちの命を懸けた「批判精神」に圧倒されていました。
フランソワラブレーの作品『ガルガンチュアとパンタグリエル』を翻訳した
渡辺一夫の著書を、若い頃に夢中になって読んだこと。
その後程なくして、モンテーニュの『随想録』に読みふけったことなど
私の過去の読書遍歴の中に、ルネサンス期の文学はいく度も顔を出すのですが、
今回の学びで得ることのできた最大の収穫は
歴史を切り開くのは「批判精神」だということを再確認したことです。
現代の社会に、自分が暮らす日本という国に、あるいは世界に向けて、
一人の若者の視点で、正当に批判するということの意義を、
私は、どれほど伝えてきたでしょうか。
正当な批判には、批判する対象への確かな理解が必要です。
その為に学ぶことのすべてが、学校現場での教科学習だと言っても過言ではありません。
私が授業を通して生徒たちに語るべきことは、
現状を越えて、新たな地平を切り開くことの意義。
そのために真の「批判精神」を育てること。
遅ればせながら、それらのことを軸にして
教師の仕事を全うすることしかないのだと思っているのです。