兵藤裕巳著『琵琶法師』を繰り返し読みながら、だいたいつかめたことは、
南北朝時代から室町時代初期にかけて、琵琶法師が語る『平家物語』の人気は
すごかったらしい。そうした流行が、人々の中に『平家物語』を
広めていったとなると、同時期『平家物語』は諸々の芸能にとって、どうしても
使いたい題材だってことだろう。
ただし、観客が喜ぶ面白い仕立てにすることが必要不可欠だったはずだ。
もともと、琵琶法師が語る『平家物語』は滅亡した平家の祟りを封じ込めるのを
目的として、その霊が鎮まるように、平家一門の興亡を琵琶法師に、いちいち語らせ
ながら、一つの物語として、まとめられていったものらしい。
そうだとすると、『平家物語』を題材にした芸能を、より豊かなものにする
ためには、琵琶法師が語る『平家物語』のレベルにとどまっている
わけにはいかない。色々な工夫が凝らされるはずだ。その視点で『風姿花伝』第二の
の「修羅」の項は語られているのではないか。