40年、そして20年

 君は東京に行くといいよ

 こともなげに言った

 この家を支えて

 かろうじて持っていた私が

 仕事を失ったら

 私にどうやって生きろと言うのかって

 どこか強く、どこかこともなげに問いかけてみた

 悲しそうな顔になった

 もう、私を食べさせてなどいけないと

 この先、到底その自信はないから

 君は好きなところへ飛び立ってと

 素直に 素朴に 私のためにもと

 思ったのだろうね

 焼酎をやめて

 しっかりと私を抱きしめてって

 実はずっと昔から頼んでいたけど

 君は出来ないまま

 今日まで来ちゃったね

 だから それなら これからを生きようって

 そういうことも ついこの間

 かあるく かあるく言ったつもりだったのに

 年よりは10歳も老人になった君の

 しわだらけの、真っ赤な顔を見ていたら

 涙が止まらなくなっちゃったんだ