パワフル

 17年ぶりに大腸内視鏡検査を受けました。特別我慢できないほどの自覚症状があったというわけでもないのに、なぜ、急にそんなことをしようと思い立ったのかと言えば、永い間共に暮らしてきたK君が、食道癌と大腸癌を患ったからです。

  すでに去る1月29日に大腸の内視鏡検査の中で、一つのポリープとして切除されたのが早期の大腸癌でした。しかしこれは、そう遠くない時期に追加の手術をすることになっています。一方で食道癌の方は4月6日に内視鏡を使って切除する予定になっています。 

  昨年の秋のことですが、ある朝、K君はトイレから出てくると、「出血したよ」というのです。ああ、そうか、いよいよ癌になっちゃったのかと、酒もたばこもやめられないK君には、いつかそういう時が来るに違いないと、私の中で覚悟はできていました。

  ところが、その症状は、直後の一週間の入院では、癌とは診断されませんでした。その後も一応経過観察がなされましたが、その後、ほぼ三か月が経った年明けの一月の末に大腸の内視鏡検査をして癌が見つかったのです。

  さて、その日からは、大腸からどこかに転移していないかと、検査が続きました。すると二つ目の癌が見つかったのです。今度は食道癌、いずれも早期の癌だったのです。

  まあ、そういうわけでK君は、これまで一度も経験したことがない癌との「闘い」に挑むのです。いや、癌との「闘い」というより、病気の程度がどうであれ、自らの終焉まで、どうやって生きていくのかが、あらためて問いかけられ、それなりの答えを出していかなくてはならなくなったという方が、適切な言い方になると思います。

  そこで冒頭に返りますが、病も、老いも、死も、K君だけの問題ではなく、K君と50年近くも一緒に歩いてきた私自身の問題でもあるのは当然のこと。今さらながら、そのことを強く思ったのです。そこで、すでに私の中に存在しているかもしれない病を、まず確かめてみたくなったのです。

   病への不安から検査をしたのではありません。後、どれくらい生きられるのかはともかく、いずれはやって来る死の瞬間まで、K君と一緒に、自分なりに生きてやるぞという闘争心のようなものが、じわじわと湧いてきたのです。

   なんだか、とても不思議な気分です。それにしても、こんな気持ちで大腸の内視鏡検査を受けたなんて、私はまだまだ、元気でやって行けそうです。